神経を取らない努力

  • 2018.04.10 Tuesday
  • 09:00

炎症が神経にまで及ぶと、一般的には痛みが起こり神経に炎症が波及し根の治療になることが多いです。

しかし、神経に炎症が波及しても、神経すべての部位で細菌が広がり、炎症が起こり神経が死んでしまうわけではありません。

神経にも炎症に対する抵抗力があり、それ以下の炎症ならば生き抜くことも十分考えられます。

つまり、回復が望めない部位のみ神経を取り除き、それ以下の神経は回復を期待して残すという考え方です。

そこで、最近当院ではマイクロスコープを駆使し、神経の切断面と出血の状態を観察することによって神経の状態を観察し、生き残ると思われる部分から先の神経を残すことを行っています。

 

我々が大学で教育を受けたのは30年以上前です。

この時の教育では、感染した歯質を除去しているときに神経が露出したら、神経自体に細菌が感染しているので神経をとると教わりました。

この考え方は今でも中心的な考えとして残っています。

ただ知識のアップデートを重ねて、様々な臨床報告を勘案してみると残せる場合もかなりあることがわかりました。

これはいうなればチャレンジなのかもしれませんが、取ってしまったらゼロになってしまうのであれば、説明して同意が得られるならばやってみるべきと考えます。

ただ、炎症に対する抵抗力や治癒能力はどんな検査や診査を併用してもクリアにはできない課題です。

慎重に努力をしても、抵抗力が細菌に負けて神経が死んでしまうことも考えられます。

その場合は、従来通り神経の治療を行うことになります。

 

この方法は従来から生活歯髄切断法という名称で行われてきました。

ただ、適応の多くは神経の生命力が高い小児期に限って行われてきました。

今回の応用は、あくまでも成人であり、神経の周りまでう蝕による歯の軟化が起きているものを指します。

 

従来法では水酸化カルシウムが用いられてきました。

これを用いた場合、その効果で神経の器に石灰化が進み神経が非常に細くなる問題点が言われてきました。

この場合でも神経は生き続けるのですが、本来の知覚を残るかどうか疑問が残ります。

そこで、当院では以前から特殊なケースの根管充填で用いてきたMTAを応用しています。

MTAを用いた場合、水酸化カルシウムを用いた場合と同じように、切断面に歯の堅い壁を作りさらに神経の器は細くならない特徴があります。

残念ながらこの方法は保険適応ではありませんが、後戻りのできない「取り除く」という治療を回避できる可能性があります。

治療前にぜひとも考えていただきたいオプションなのです。

マイクロスコープでの根の治療

  • 2018.01.08 Monday
  • 15:07

新年あけましておめでとうございます。久しぶりの更新になります。

本年から、マイクロスコープでの診療のもう一つの特徴である「診療の見える化」にも取り組もうと思っています。

本来なら動画で提示すれば一目瞭然ですが、容量が大きくなりすぎる可能性があるためブログでは静止画で提示したいと思います。

 

根の治療は神経の入っている管の中を完全に掃除し、細菌の増殖因子をなくする治療です。

今までのルーペの治療では、視覚的に見てそれを判断することができませんでした。

しかし、マイクロスコープを用いればしっかり確認しながら治療を終わることができます。

下の画像は、治療途中の画像です。白い肉のような腐敗物が残っています。

根管内2

それに対して、様々な特殊な器具や洗浄器具によって清掃が終わった状態が下の画像です。

根管内清掃後3根管内清掃後2

その違いは一目瞭然ではないでしょうか?

この歯は、東洋人に非常に多いトヨ状根の比較的根管治療が難しい根管形態でした。

しかし、マイクロスコープ下で確認しながら行えば高いレベルで治療を終了することが可能です。

 

今年は、徐々に診療の見える化に取り組んでいこうと思っています。

本年も当院をよろしくお願いいたします。

コロナルリーケージ

  • 2017.03.30 Thursday
  • 10:11

根の治療は、神経が入っていたトンネルの中の腐敗物をかき出し、染み込んだ毒物をトンネルを拡張することで掃除して、炎症を引き起こす空間を無菌なゴムを圧力をかけて充填する治療です。

ただいくら圧力をかけてゴムを詰め込んでもそのわずかな隙間から細菌は侵入してきます。

本日のテーマはそんな話「コロナルリーケージ」です。

虫歯で神経が死んでしまう痛みを味わった患者さんは、根の治療によってその痛みが劇的に回復することを体験して、さらにその治療が終わったことで一安心していることでしょう。

ところが、根の治療が終わっても口腔内からの細菌の侵入は防げません。

コロナルリーケージ1

権威ある研究では、根の治療が完璧に終わってもその上の土台がしっかりしていなければ感染し再治療に至る確率が上がります。

さらにショッキングなデータでは、いい加減な根の治療といい加減な土台を比べると、いい加減な土台をたてた方が根の治療の再治療の確率が高いということでした。

コロナルリーケージ2

日本歯内療法学会(根の治療の学会)の見解でも、「根の治療が終わったらなるべく早めに樹脂で封鎖して口腔内からの感染に対処すべし」と言っています。

根の治療に限らず、歯科治療は何か一つでも問題があるとそのほころびから問題が波及し再治療になってしまいます。

一歩一歩が基本なのです。

 

根の治療の質を上げる

  • 2016.12.13 Tuesday
  • 09:10

9日金曜日は5時30分で診療を終了して申し訳ありませんでした。

CDRI12月例会でした。

今回は、武蔵野市開業の阿部修先生に「歯内療法の質を高めるためにできることは」をテーマにご講演いただきました。

根の治療のすべての項目において総点検し、それぞれのポイントを分析、総じて総合の成績を上げる。

実に明解な講演で、まさに明日から実践可能な内容でした。

ただ、それぞれの質を極限まで高めるのは容易なことではありません。

心を引き締めて診療にあたりたいと思います。

隔壁

  • 2015.01.22 Thursday
  • 08:36
先日のラバーダムに続き、本日はその前処置である「隔壁」についてのお話です。

隔壁とは?
歯が大きく虫歯になってしまい、歯肉の下くらいまでなくなってしまった時に行うものです。

隔壁前

こんな場合、何もしなければ当然ラバーダムは出来ません。
そうなると、根の治療中は唾液だらけで無菌的な処置など出来ず、治療は失敗に終わってしまいます。
そこで歯のなくなった部分を一時的に治して、唾液が入らないように壁を作る処置が「隔壁」です。

隔壁後

この処置を行っておくと、根の治療後も土台の一部に利用できたりメリットはかなりあります。
ただ、この処置もラバーダム同様あまり目にすることはありません。
その理由は、やはり無料だからです。
しかし現在は当院では可能な限り行っています。
それはやはりラバーダムと同様治療がしやすいからです。
またこの違いは、必ずや術後の治癒の差に現れてくると信じているからです。


 

ラバーダム

  • 2015.01.21 Wednesday
  • 18:29
本日の話題、ラバーダム

ラバーダム

この古くからあるが、あまり日に目を見ない便利技術
本日はそんなお話。

主に、根の治療に使用されるこの技術。
過去にもブログアップしていますが、古くからある技術です。
ところが、あまり活用されているとは言えないようで、患者さんに驚かれることもしばしばあります。
その理由の一つに、基本的に無料ということがあるのかもしれません。
昔は、一回100円の点数がついていましたが、ずいぶん前になくなってしまいました。
とはいえ、昔は多く用いられていたかといえばそうでもなく、それが一因とは言えないようです。

当院でそれでも用いる理由はその利便性にあります。
特に根の治療は、唾液が入らないようにすることが重要です。
それを、安価で確実にするのはラバーダムをおいてほかにはありません。
以前は、歯がほとんどなくなってしまっている患者さんの場合、ラバーダムは諦めて他の方法を用いていました。
最近では、そんな場合も一時的に歯を作って(隔壁と言います)ラバーダムをするようにしています。
この隔壁も当然無料ですが…。
ただ、そんな苦労をしてもラバーダムの利便性には代えがたいものがあります。
今後は、根の治療のみでなく、ほかの治療にも応用していきたいと思っています。
できるなら、せめて無料でやらなければならないところを改善してほしい便利技術なのです。





 

神経がなくなることによる影響

  • 2015.01.09 Friday
  • 08:24
神経まで炎症が及んで、何もしなくても痛みが出てしまったりした場合、神経をとる治療を行います。
本日はそれによる弊害のお話。

神経をとる理由は、当然のことながら、歯をもたせるためです。
しかし、神経はなくてもいいものではありません、それがなくなった場合いろいろな弊害が考えられます。
今回はわかりやすくするために、無くなった後の弊害に限定してお話をします。
神経をとった後は、歯の中の新陳代謝がなくなり、基本的に組織液に満たされている象牙質が乾燥していきます。
そのことによって、歯は枯れ木のような状態になって折れやすくなります。
これは、歯の土台の入れ方にも大きく左右されますが、根本的には歯のしなりがなくなることに起因します。
そこで大切になってくるのが、帯環効果です。
これは、歯を被せるときに、全周囲を少なくとも1mm、できれば2mmの深さで自分の歯を覆うということです。
これを与えてやると、歯の破折をある程度抑えることができます。
しかしその為に、多くの場合手術が必要になったり、矯正したりする必要が出てきますが、当院では最も重視している事柄の一つです。

歯は削らない方がいいし、神経も取らないに越したことはありません。
しかしとらなくてなならない状況になった場合、歯をもたせるためには大事な事項だと考えているのです。


 

神経をとらないといけない炎症とは?

  • 2014.12.25 Thursday
  • 08:20
歯が痛いといっても、冷たいものがしみる状態から、何もしなくとも痛む状態まで様々です。
さらに痛むといっても、ものが入ると痛む状態やかむと痛む状態など様々です。
それでは、神経をとらないといけないような痛みとは、どのような痛みなのでしょうか?
本日はそんな話です。

そもそも、神経をとらないといけないのはなぜでしょう。
炎症が強いと、神経が充血して血行不良を起こし、貧血になって腐ってしまうからです。
ということは、腐らない程度の充血なら、神経をとらなくてもいいということになります。
そのすみ分けが本日の話題です。

一般的には、「急性炎症のあるなし」で行われます。
つまり、この症状があれば神経をとるという、基本的な症状の基準があります。
それは、自発痛あり何もしなくても痛む、ズキズキしてそこに心臓があるように痛む。
または、誘発痛が長引くしみたりするものがなくなっても30秒以上尾を引く。
さらに、初めは冷たい物に痛みを感じていたのに、最近暖かいものに感じる場合や、横になると痛みが増すなどは、症状が進んだ場合の指標になります。

このような症状は、レントゲン写真と比較して検討されますが、必ずしも大きな虫歯が見つからないこともあります。
また、以前治療終わっている歯の場合もあります。

歯のひびが原因だったり、徐々に神経の炎症が進んだ場合がそれにあたります。
さらに、痛みの誘発試験や電気歯髄診断等を併用して治療計画をたてます。

神経は当然ながらとってしまうと元には戻りません。
また歯の新陳代謝もなくなってしまうので、歯の寿命も必ず短くなってしまいます。
様々な審査と症状の聴取を十分して慎重に検討している瞬間なのです。

パーフォレーション

  • 2014.05.04 Sunday
  • 20:49
本日は根の治療の話です。
「パーフォレーション」とは、本来歯の中にある神経の入っているトンネル(根管といいます)から外れたところに穴が開いていて、かつ根の外まで突き抜けている状態のことを言います。
このようになってしまった場合、当然その穴を密封してふさぐ必要が出てきます。

穴をふさぐ材料にはかみ合わせの力に耐える強度が要求されます。
さらに、体にやさしい「生体親和性」も要求されます。
そのうえで私たちは、本来の神経の入っていたトンネルの掃除もしなければなりません。パーフォレーションする箇所は、根管の曲りが強いところが多いので、さらに追従しにくい方向に器具をまげて掃除しなければなりません。これは非常に困難なものです。
穴が開いている箇所も重要です。歯周病変と交通しやすい部位では予後はさらに悪くなります。比較的上の部分の穴は歯周ポケットと交通しやすく、また根の分かれめ近くの穴も分岐部病変と交通しやすくもともと予後の悪い病変をさらに複雑にします。

これらの障害をすべてクリアできた場合にかぎり、その歯を保存できますが、当然穴が開いていない歯よりはリスクがあります。

パーフォレーションがあるからすぐに抜歯というわけではありませんが、予後に対する覚悟は必要なのです。

根の治療の成功率

  • 2014.04.20 Sunday
  • 15:50
18日は5時30分で診療を終了して申し訳ありませんでした。
CDRI4月例会でした。

今月は、ペンシルバニア大学大学院卒業で、根の治療の専門医の、石井宏先生「複数の問題のある歯の根管治療」について講演いただきました。
考え方は実に明確で、合理的でした。

石井宏先生と 懇親会で

その中で、根の治療の成功率という話がありました。
根の治療の成功率を上げるためには、マイクロスコープを用いて根の先を切る手術をセットで考えることが大切である。
すなわち根の治療で治せなかった歯は、その後の手術で9割救えるからということでした。

ただ、確かにとうなづくところが、その成功とは、根の先の病気が治ることあるいは、根の先に病気を作らないことを指すということです。
つまり、それによって歯が長く持つということではないということです。
歯を保存させるためには、第一に残存歯質の量、次に歯周病の重症度、その次に根の先の病気になります。
言い換えれば、歯を残す要素のうち90%は、根の治療以外の要素、根の治療の要素は10%にしか満たないということでした。
日本人はとりわけ自分の歯にこだわります。
もちろん私も日本人、やはりインプラントよりは自分の歯のほうを選びます。
ただ、その選択の危うさを理解してから選択してもらわないといけないと実感した講演でした。
 

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