抜歯後(特に親知らず)のマヒについて
- 2018.04.09 Monday
- 00:11
私の所属していた麻酔科では、手術中の全身管理に加えてもう一つの仕事があります。
それはペインコントロール。
神経痛や神経麻痺を治すことです。
本日は歯科領域に比較的合併しやすい抜歯後の知覚異常についてのお話です。
現代人はあごの大きさが小さくなってきている関係から、親知らず(特に下あごの)がきちんとした方向に出れず埋伏する方が多くいます。
この様に横になって埋伏いている状態の方も非常に多くいらっしゃいます。
この歯を抜く場合、あごの骨の隙間から歯を出さないといけないため、歯を割ったり、根を分割したり、骨を削ったりしないと取り出すことはできません。
歯は抜けないようにしっかり生えているので、抜くということは歯の周りに微小な骨折を起こして抜けるわけです。
そのため、歯の周りには炎症が起き、そのため微小循環に充血が起き血行不良になります。
これによって、足がしびれたような状態になり、神経の知覚麻痺が発症することがあります。
下の親知らずの近くの下歯槽神経の知覚は非常に鋭敏なので、この麻痺はかなり気になるものです。
また足のしびれと同じように、全く感じない状態から、触るとビリビリした状態になる知覚異常の段階のどの段階にもなります。
このビリビリ感の時期は、全く感じない状態より知覚が回復いている状態ですが、この時期の方が不快感は多いです。
治療には、ビタミン療法、神経賦活剤の投与や星状神経節ブロック注射等が行われます。
治療に対しての反応は比較的緩慢で、治療には長期間かかる傾向にあります。
場合によっては、年単位でかかることもありまます。
たとえ大学病院で抜歯したとしてもマヒになるときはなりますが、患者さんにとっては負担になってしまう合併症です。
当院では、知覚異常が起こった場合は医科の麻酔科専門医に紹介しています。